週末は海辺の生活で思い切りリラックス。
「慌しい日々をリセットできる住まいをつくりたかった。」
そういって、鎌倉にセカンドハウスを構えたNさん御夫婦は、平日は下北沢の自宅から都内の会社に通う毎日。今ではほぼ毎週末、この家に来ては、のんびりと週末を過ごされています。
ワイン好きな御夫妻とすっかり気が合ってしまった私達は、今でも週末、お宅に呼んでいただいては一緒にワインをあける仲に。最近では御主人の手作りベーコンがおいしくてたまりません。
土地探しと建築家探し
- Nさん
- 「海の近くに住みたい、という思いで1年ほど湘南地方の土地を探しました。
秋谷から大磯にかけ、海が見えることが条件で、更地から古屋つきまで幅広く、地元の不動産やや、住宅情報誌などをチェックし、隔週末ごとくらいに足を運びました。」 - acca
- 「設計事務所にこだわっていたんですか?」
- Nさん
- 「いえ、特に「自分たちで建てる」、ということにはこだわっていませんでした。
結果的には知り合いになった地元不動産屋から情報公開前の土地を紹介していただき、決定しました。」 - acca
- 「なにしろ、ここ立地最高ですものねぇ。海が丸見え。しかも、江ノ電の駅からも近い。階段がちょっと大変ですけれど、初めて拝見したとき最高のロケーションだって思いました。」
- Nさん
- 「そうですね。この土地を決めてからは、建築家探しを始めました。これも売れっ子建築家から、住宅メーカーのおかかえ建築家まで、10人近くの方と会いました。売れっ子建築家には、「依頼されてから着手するまで3年かかる。どんな家を希望するかは言わなくてもいい。どんな小説が好きか、などを教えてくれ」といわれ、恐れを抱いて断念。お風呂しかないような家ができてしまったら困ると思いまして(笑)。
住宅メーカーの青図を見て、自分たちの予算ではこんなものしか建てられないのか、とがっかりしたり。こんな家ならテントに住む方がまし、とか。」 - acca
- 「またー、Nさんは本当に辛口だから。。そこがおもしろいんですけど。」
- Nさん
- 「ほかにもね、フランス人建築家もいたんですよ。彼は部屋ごとに壁の色が違う設計になっていて、精神を蹂躙されると恐れ、断念しましたね(笑)。
あと、ドイツ人建築家の「わたしの作品だからわたしのこどもみたいなもの」という強引さに、断念したり。」 - acca
- 「なるほど。」
- Nさん
- 「まあ、本当に色々な人がいて、めんどくさいけれどなかなか楽しい出会いでした。
で、途中から、海の近くという土地をよく理解していて、一生おつきあいできる(逃げられない)地元の建築家にしよう、と方向転換を図りました。」 - acca
- 「それで、逃げられなくなったのが私達というわけですね(笑)。」
- Nさん
- 「そういうことですね(笑)。やっぱり、地元の建築家だというところに安心感をおぼえたのと、古民家再生などの活動をなさってたじゃないですか。あれに、共感を覚えました。その頃、仕事で古建築の修復の番組を作っていたりしたのもあって。」
- acca
- 「ありがとうございます。」
- Nさん
- 「でも実は、久恒さんの名前が、私の祖父の名前を逆さにしたのと同じだったこととか、車のナンバーが、うちのと凄く似ていたこととか、そんなこともご縁に感じて。ま、結果的には、お二人のお人柄だったってことにしておきましょうか。」
こだわり
- acca
- 「でも中野さんの場合、イメージコンセプトがはっきりしてましたよね。
「軒」が長く張り出している家がいい、というすごく具体的なイメージがあって。
それは、海に向かって開いているけど、同時に閉じこもれる空間だっていうこと、その大人の空間感覚みたいなものは、形としてすんなりイメージできました。」 - Nさん
- 「そう、やはり形として、心地がいいこと。そして、素材感。その2つはとてもこだわりたいと思っていました。それが、この家では、かなり実現できましたね。
キッチンひとつとっても、海は見えるけれど、あえてオープンキッチンじゃなくて閉じた空間にしたいという要望はその通りになりましたし、屋根裏のような2階の寝室も、閉じこもれる場所となっています。」
- acca
- 「ある意味で、陰と陽が、1つの家の中にあるっていいと思っています。この家はまさにそうで、海に開かれたテラスと、海を忘れさせてくれる寝室という感じですかね。」
成功する家作りの秘訣
- acca
- 「イメージが共有できたということが、家作りが成功できたということだと思うのですが、家作りをしてみて、なにか感じられたことってありますか?」
- Nさん
- 「やっぱり、建築家さんと時間をかけて対話することが大事だなと思いました。時間だけではなく、打合せには体力もいりますし。」
- acca
- 「やはり、粘り強さは必要ですね。それはお互いの思いを伝えることをあきらめないというか。
特に、中野さんは素材へのこだわりとして、ゆずれないものが結構ありましたしね。」
- Nさん
- 「どうしても気に入った古材風のフローリング、そうこれですよね(写真)これを使いたいというのはありましたね。でもその分、M社の洗濯機はあきらめて、L社をオークションで買いました。」
- acca
- 「そういう割り切りは、満足いく家作りをする上で、大変重要ですよね。
わがままをするには、やはり努力もしなくちゃっていう。」
- Nさん
- 「ま、あとはそういった紆余曲折を見守ってくれる建築家の方々の忍耐、それにも感謝してます。」
- acca
- 「いや、忍耐ということはないですよ。」
- Nさん
- 「それにしても、家作りは、実はとても楽しかったですね。久恒さんがどうにも「階段」が好きらしく、いらっしゃるたびに階段の前に佇み、「いいなあ」と言っていたのが、すごく印象に残っていますし、様々にキャラクターの濃い職人さんたちの一挙手一投足も心に残っています。」
- acca
- 「これからも、ほんとよろしくお願いします。次はフィレンツェの番組かな。」